Archive for 10月 5th, 2010

中国観光客に大きな期待、羽田空港新国際ターミナル、21日開業―江戸の町並み再現も課題山積

東京国際空港 新ターミナル 2010年10月21日に羽田空港の新国際ターミナル(地上5階建て、15万4000平方メートル)が開業する。総事業費約1100億円で、空と大地をイメージした。政府は「観光立国」を掲げ、中国人観光客などの訪日に官民挙げて期待するが、課題は山積している。

 商業施設の全体コンセプトは「Made In Japan~羽田Only One」。随所に「日本」を意識したデザインが採用され、江戸時代の街並みを再現した「江戸小路」は、映画ロケのセットように造られ、ミニ・テーマパークの様相。異国情緒を求める外国人観光客に受けそうだ。段差のないバリアフリー設計の搭乗橋も世界で初めて導入された。

 ただ、新ターミナルは「小ぶり」の感は否めず、韓国・仁川(ソウル)、中国・虹橋(上海)などのハブ空港には比べるべくもない。実際、旅客機スポットは10で、年間発着能力(昼間時間帯)は3万回にとどまる。新しい4本目滑走路(D滑走路、2500メートル)からターミナルまで、地上走行で25分もかかる。

 「国際線では10倍近いキャパを持つ成田があくまでも主力。成田と一体で取り組まなければならないのにコップの中の主導権争いをしていては日本の空の未来はない」(空港評論家)との声も。現在でも首都圏空港のインフラは成田、羽田合わせても大幅な不足で、両空港の共生的発展が望まれる。

 民主党政権は10年6月に策定した「新成長戦略」で観光産業を経済再生策の柱の1つに掲げ、訪日外国人を20年初までに2500万人、将来は3000万人を目指すとうたい上げたが、このままでは完全に絵に描いた餅。訪日観光客は09年に目標の1000万人を大きく下回るわずか679万人。08年から増加したのは中国だけだった。「16年には2000万人に増やしたい」(観光庁)という計画を達成するためには、観光旅行人口が急増している中国人旅行客を大幅に増やす必要がある。日本政府も入国ビザ枠を拡大し、大きな期待を寄せている。

 中国からの世界各国への旅行者数は年間4584万人(2008年)に達するが、このうち、訪日旅行者は100万人。その比率は2.2%にすぎず、韓国の19.0%や台湾の16.4%には遠く及ばない。言い換えれば、中国人の訪日には大きな潜在的需要が期待できるわけで、これを取り込めれば、日本の「観光立国」も夢ではない。

 ある銀行系調査リポートは「世界中から注目される中国人観光客の招致競争は熾烈を極めており、リピーターを増やすよう官民で知恵を出し合い、取り組む必要がある」と指摘している。「観光立国」は掛け声だけでは実現しない。外交も含めた日本の「総合力」が問われている。